たび猫の南欧・モロッコ旅行記

南欧・モロッコ旅行記16日目

南欧・モロッコ旅行記16日目:マドリードで初めてスリに遭遇!

 さて、色々買い物したのでまたホテルに戻ろうとした時、とうとう私も初めてのスリに遭遇したのであった!プエルタ・デル・ソルの賑やかな通りを渡ろうとして立ち止まっていたところ、ちょっと他の人たちとは明らかに様子の違う女の人の集団が来て、私を取り囲んだのだ。そして中心の女の人が、しきりに片言の英語で、大きな地図を広げながら私に話し掛けてきたのだ。

 パッと見ても明らかに旅行者という感じの人たちではなかった。こういってはなんだが、薄汚く、貧しそうな感じの人たちなのだ。それに顔つきも何となく油断ならない感じ。でも地図を広げて片言の英語で話し掛けてくる。きっと何か私に聞きたいのだろうと思い、私も一生懸命彼女たちの言いたいことをわかろうと耳を傾けた。

 すると何だか様子がおかしい。片言の英語で話し掛けてくるのだが、ちっとも要領を得ないのである。どこかの場所を聞きたいのかと思って、私も英語で話そうとするが、話し掛けている女の人は、片言の英語で意思を通じさせようという気がないことに段々私も気づいてきた。とにかく単語を口走って私の注意を引こうとしているだけなのである。

 途中で「これはおかしい」と思った私は、ハッとして自分がたすきがけに背負っていたショルダーバッグに手を当てた。するとその時初めて、周りを取り囲んでいる女の人が広げている地図の下に、私のバッグがあることに気づいた。そしてその地図の下で、私を取り囲んでいた女の人の手が、バッグの中をまさぐっていたのである!!

 本当にびっくりした!!こんなふうにスリが寄ってくるとは考えてもいなかったのだ。気づいた途端、私は思わず後ろに飛びのき、女の人たちに向かって大声で「No!!」と叫んだ。これしか言葉が出てこなかった。

 “ちっ、気づかれたか”というような感じの表情をして、その女の人たちのグループは悪びれるでもなく、急いで逃げる風でもなく、冷めた感じでその場から去っていった。本当にぞっとした瞬間であった。

 私はマドリードに来てすぐに、最初に泊まったホテルの女主人から、マドリードの町を歩く時は、大金の入ったお財布をバッグの中に持ち歩くようなことはしてはいけないと言われていた。お金はジーンズのようになるべく体にぴったりしたズボンのポケットとかに、お財布とかに入れずに直に入れておくように言われたのだ。そうすればポケットをまさぐられてもすぐに気づくことができるからだ。

 私はその忠告通り、バッグにはお財布を入れずに、すぐ使うお金をポケットに入れ、残りの大きなお金はパスポートとかと一緒に下着の中の腹巻に入れて持ち歩いていたのである。ホテルの女主人のアドバイスは本当に適切であった。この時この人の言うことを聞いておいて本当に良かったと感謝したのは言うまでもない。

 でもそのすぐ後、大変なことに気づいた。私はバッグの中に、もしかしたらお金よりも大切かもしれないカメラを入れていたことに気づいたのだ!多少のお金は盗られたとしてもまあいいとして、大事な思い出や風景がいっぱいつまったカメラを取られたりしたらそれこそもう取り返しがつかないのである。本当に手が震える思いで、バッグの中に手を入れ、カメラがあるかどうかを確かめた。

 すると本当に幸運なことに、カメラはバッグの中に入っていた。私が女の人たちの行動にすぐに気づいたから盗られなかったのか、女の人たちはお財布しか狙っていなかったのか、どちらなのかはわからない。とにかく、スリに遭ったものの、運良く何も盗られずに済み、貴重な勉強をさせてもらったというところで済んだのであった。本当に運が良かったとしか言いようがない。

 あとで考えてみれば、多分この女の人たちはジプシーだったのだと思う。これまで私はジプシーの人たちというのを実際に見たことがなかったけど、本などでよく読んだことのあるジプシーの人たちの特徴にあっていたのだ(違っていたら本当に申し訳ありません)。

 とにかく、一般の人たちとは絶対に違う何か独特な雰囲気を持っており、一度私のように怖い目に遭えば、二度と忘れられない強烈な存在感(?)というか感覚をはなっていたのであった。

 この数年後、夫とイタリアに行ったときにも、夫がスリに遭いそうになった。この時も私がマドリードで遭った女の人たちと同じ雰囲気を持つ女の人に囲まれ、片言の英語であれこれ話しかけ、気を引いているうちにポケットをまさぐるというものであった。

 私はイタリアでその女の人たちを見るなり、マドリードでの出来事を思い出し、ぞっとして足早に立ち去ったが、それに気づかない夫はのんきに風景などをカメラで撮っていて、あっという間に囲まれてしまったのだ。

 夫も結局何も盗られずに済んだのだが、自分が実際体験してみて、あの危険な雰囲気がよーくわかったと言う。

 彼女たちの手際は慣れているし、日本ではまずお目にかからないスリの方法なので、多くの日本人が被害にあっていることだと思った。いつも平和に生活している日本人からお金を盗るなんて、この人たちからしたら朝飯前だろうと思った。本当に海外に行ったら、日本では想像のつかない犯罪が待ち受けている。身をもって経験した瞬間であった。

 マドリードに行く前から、マドリードの町は油断ならない、スリなどの犯罪があふれているからあまり好きではない、という意見を数人の人から聞いたが、ちょっとその意味がわかった瞬間であった。

 スリ軍団に囲まれながらも無事生還した私は、とりあえずひとまずホテルに戻ることにした。しばらくはドキドキしたままであった。Mちゃんは1日中美術館めぐりをしたため、疲れていたのでもうホテルで休むと言っていたが、この時はまだまだマドリードの夜は明るく、まだドキドキしていたものの私は大人しく休んでいられない気持ちもあった。

 でも、ついさっきのスリ未遂のことを思うと、一人で出かけるのはちょっと不安でもあった。最後の最後でマドリードの危険さを見せ付けられ、これは油断するなと言うことかもしれないという考えが頭をよぎり、このまま最後の夜はホテルで静かに過ごそうかとも思ったが、結局まだまだマドリードを満喫したいという誘惑には勝てず、一人でまた出かけることにした。

 いくら最後の夜とは言っても、お金や貴重品を盗られたら嫌なので、Mちゃんはホテルに残ることだし、貴重品はみんなホテルにおいて、バルで一杯やれるだけのお金を持って出直すことにした。

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