たび猫の南欧・モロッコ旅行記

南欧・モロッコ旅行記11日目

南欧・モロッコ旅行記11日目:モロッコとアルケミスト

 モロッコでミントティーといえば、今ならもう一つ思い出すものがある。それはパウロ・コエーリョの本『アルケミスト』である。

 この本は、スペインの羊飼いの少年が、エジプトのピラミッドの宝物の夢を何度も見て、それを探すため旅をするという物語なのだが、少年はスペインから海を渡り、このモロッコのタンジェに来てここから旅が始まるのである。私がたどった道と同じではないか。そのこともあり、私はこの物語を本当に楽しく読むことができた。

 この物語は子どもにも読めそうなシンプルな物語なのだけど、これがまた奥の深い物語なのだ。人生について、心について考えさせ、そして真理というのは実はとてもシンプルなものだということを教えてくれる、素晴らしい物語なのだ。

 私はこの本をモロッコに行って来てから数年たった後に読んだのだが、物語の中のタンジェの町並みなどを読むと、「ああ、これはあの辺のことなのかな」「私もこのお茶を飲んだな」などとしみじみ思い出し、物語の素晴らしさに加え親近感も持ち、私にとって特別な一冊となったのであった。

 私はこの『アルケミスト』の本を本当にすりきれるほど、何度も何度も読んだ。本もハードカバーの本、文庫本、英語版の3種類を持っているほどお気に入りの本だ。もしかしたら今まで読んだ本の中で一番好きな本かもしれない。そのくらい私はこの本に教えられたことが多い。

 特に私はこの本を精神的に辛い時に読んだからかもしれない。でもこの本のお陰でどれだけ助けられたことか・・・。そして真理というのは本当はとてもシンプルなものであるということも教えられ、それ以来世の中の見方や人生への取り組み方も変わった気がするのである。

 とにかくまだ『アルケミスト』を読んでいない人、特にスペインやモロッコを旅行したことのある人はそれだけでも楽しめると思うので、ぜひ一読することをお勧めします。

 こうして私はモロッコのスープとミントティーのお陰で、だいぶこの頃には元気が出てきた。フェズからタンジェへ帰るバスの中では本当に死ぬほど体も心も弱っていたのが、嘘のように元気になってきた。おじさんの励ましのお陰もあったかもしれない。

 おじさんは私たちにミントティーをご馳走してくれ、ホテルまで見送ってくれてそこで別れた。本当に親切なモハメッドおじさんだった。最初はあんなに疑ってかかったのに、それでも気分を害するでもなく私たちに付き合い、最後はこんなに面倒まで見てくれた。本当におじさんには感謝の気持ちでいっぱいだ。

 おじさんは私たちと別れる時に、私とアドレス交換をした。お互い英語の勉強のために英語で手紙を交換しようと。そして最後にお願いがあると私に初めて頼みごとをしてきた。何かと思ったら、日本から手紙を僕に手紙をくれる時、できれば日本のポストカードを一枚一緒に送って欲しいというのだ。おじさんは自分が外国に行けないかわり(やはりモロッコとかでは私たちのように自由に世界中を旅できる人のほうがごく少数なのだろう)、色々な国のポストカードを集めているのだという。

 なんだかその願いを聞いてじーんとした。おじさんとの出会いで私はまたたくさんのことを感じ、そして学ぶことができただろう。日本に帰ったら、いかにも日本らしい素敵なポストカードを探して、さっそくおじさんに送ろう、そう決意した私であった。

 実際、私は日本に帰って来て文房具屋さんでいかにも日本っぽい感じのポストカードを何枚か買い、おじさんに送った。おじさんからも返事が来て、またぜひモロッコに来てほしいことが熱く書かれていた。

 その後何年もたつが、おじさんは忘れたころにふと手紙を私にくれ、「次はいつモロッコにくるのだ?」ということを問い掛けてくれる。私のことを忘れずに気にかけてくれるだけでも本当に嬉しいが、いまだにモロッコを再訪することができずおじさんとの約束を果たせないのが残念である。

 こうして私は死ぬほどの思いをしたにもかかわらず、無事に旅を続けられるところまで回復した。今夜はタンジェに泊まるが、明日はまた海を渡ってスペインに向かう。

 モロッコはたった数日の滞在だったが、タンジェのモハメッドのおじさん、フェズのアディルやその友達をはじめ、レストランの人やホテルのスタッフみんなに本当に親切にしてもらった。

 モロッコは詐欺やぼったくりが多いと聞くが、幸いなことに私たちはそういう人たちに騙されるようなことはなくモロッコでの滞在を終えられそうだ。本当に幸せなことだと思う。そしてここでもまた、私たちに親切にしてくれたモロッコの人たちに感謝の気持ちいっぱいになった。私が親切にしてもらえて嬉しかったことを、私は今度は誰か違う人に返すことによってお返しをしていきたいと思う。

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