さて、いよいよマドリッドへ向けて出発することにした。とうとう、旅の最終地点であるスペインの首都、マドリッドである。ポルトガルのリスボンから入り、そこから南へ下り、スペインへ入ったらすぐ今度は海を渡ってモロッコまで行ってきた。それからまたスペインへ戻り、アンダルシア地方を駆け足で抜け、最終目的地であるマドリッドへいよいよ向かうのである。
帰りの飛行機はマドリッドから乗らなければならないので、やっとマドリッドへ着くと思うとホッとするのだが、それと同時に、旅の終わりが見えてきたような気もしてちょっと寂しい。旅の日数も残りわずかだ。18日間の旅行は長いと思っても、過ぎてみればあっという間だ。しかも、私たちのように駆け抜けるように移動ばかりしていると、なおさらである。
グラナダのバスターミナルへ行き、マドリッド行きの長距離バスを探した。するとマドリッド行きのバスが2台並んでおり、どちらに乗っていいのかわからず困ってしまう。近くで日本人らしき男の子がいたので、彼に聞いてみた。
話し掛けてみてわかったのだが、彼は見た目は日本人だったが、実はニュージーランド人だという。人の良い男の子で、同じバスに乗ることもわかった。その後マドリッドへ向かう途中、休憩の時も色々話をしたりした。
今回のマドリッド行きのバスは、さすが首都に向かうバスなだけあり、とてもきれいで快適なバスであった。モロッコのバスに比べたら、天国みたいなものだ。しかも、グラナダからマドリッドへ向かう途中の景色も、アンダルシアらしい広大なヒマワリ畑こそなかったものの、雄大な草原あり、とても美しく最高のものだった。
途中の休憩時間では、先ほどのニュージーランド人の男の子と話したり、カナダから来ているフランス語の教師をやっている女性とも知り合いになり、色々話をした。やはり個人旅行をしていると、こういう時に同じ旅行者として色々な国の人と知り合いになれるから面白い。
ガイドブックには、マドリッドまで6時間くらいかかると書いてあったが、実際には5時間くらいで着いてしまい、もう着いてしまったのかと慌てたほどであった。
でも、着いてからが大変だった。マドリッドはさすが首都なだけあって、大都会である。バスターミナルも今までの地方都市のような小さなものではなく、バスターミナルとは思えないほど巨大なもので、いったいどこが出口なのかもわからないほどであったのだ。
しばらくぶりに都会に出てきた私たちは、マドリッドの都会ぶりにおろおろ^^;とりあえず出口を探し、外に出た。外に出ても一体自分たちがバスターミナルのどの辺にいるのかわからず、タクシーしか見当たらないので、普段はほとんど使わないタクシーを使って、マドリッドの中心地まで行くことにした。目指すはマヨール広場である。
タクシーでぼられることなく、無事にマヨール広場近くへ着いた。マヨール広場は、四方をヨーロッパらしいがっしりとした建物で囲まれた、大きな広場である。マドリッドの中心部に位置し、オープンカフェなども建ち並び、大道芸人の音楽があふれている賑やかな広場だ。この広場に着いた時は、「おぉ〜、大都会マドリッドへ来たぞ〜!」という感慨が湧いた。
このマヨール広場のすぐ近くに、“プエルタ・デル・ソル(太陽の門)”という場所があり、ここがマドリッドのへそになるらしい。日本の日本橋のように0�卉賄世砲△燭襪箸海蹐如△修譴海修海海�マドリッドの中心であるのだろう。人も多く、とても賑やかなところだ。
マヨール広場とプエルタ・デル・ソルの間は、細い道沿いに安いレストランや居酒屋が集中している繁華街だ。町の中心部にあるし、どこに行くにも便利。ガイドブックを見ると、この辺には安くて良さそうなホテルもたくさんありそうなので、ここでホテルを探すことにした。
すぐにコメルシアルというホテルに部屋を決めることができた。ホテルというか、マドリッドによくある大きくて古い建物の一部を宿にしている民宿といった感じの規模だろうか。コメルシアルは2階にあったが、3階にはまた違うホテルが入っているので、まさにそんな感じだろう。
でも、さすがヨーロッパなので、古くても部屋の作りはしっかりしているし、そこは値段のわりに(いくらか忘れたが)清潔で、感じが良い。宿のおばさんも愛想の良い感じのいい人だった。
荷物を置き、すぐに近くを散歩。そして本当にこの宿の場所は便利なことを実感。宿の周りは繁華街だし、食堂とかはたくさんあるし、王宮も歩いて行ける範囲だ。地下鉄の駅もすぐ近くなので、どこか観光に出かけた時も便利である。これなら夜遅くフラメンコを見に行っても、大丈夫そうだ。良いところに宿をとったと満足。
もう夕方だったので、とりあえずマヨール広場をウロウロし、そのあと王宮まで散歩をし、プエルタ・デル・ソルまで戻ってきて、その近くのレストランで夕食をとった。
それにしてもマドリッドの夜は賑やかだった。グラナダもなかなか大きな町だと思ったが、所詮地方都市なのだと思った。アンダルシアの小さな町をまわってきた後のマドリッドは、本当に大都会という感じがした。人も多いし、活気に溢れている。悪く言えば、油断できないくらい危険も隣り合わせなのだろう。
実際、今まで私の周囲でマドリッドを訪れたことのある人たちは、みんな口をそろえてマドリッドはなかなか危険でごみごみしている町だったという。スリに遭いそうになった人も多く、アンダルシアの田舎の町にくらべ、印象が悪いという人が多かった。
たしかにそんな危険な雰囲気もする町ではあるが、色々な国の人であふれ、賑やかで広場からは音楽があふれているこの町の活気、私はとても好きになってしまった。それはおいしい料理やおいしいワインがたくさんあるせいかもしれない。でも、日本の東京とはまた違った雰囲気、ラテンの雰囲気というのだろうか、その活気で夜遅くまであふれているマドリッドの町を、とても居心地良く感じてしまったのであった。
ご飯を食べたあとも、まだこの雰囲気を満喫したかったので、コーヒーを飲みにマヨール広場のカフェに移動。広場の様子や通り過ぎる人たち、それに広場で演奏する人たちを眺めたりして時間を過ごした。ヨーロッパらしい建物で囲まれたこの広いマヨール広場。ここで過ごすだけでも十分楽しかった。

ここで韓国人の一人旅の男の子と友達になった。彼とはこのマヨール広場で初めて会ったわけではなく、実はモロッコからの帰りのフェリーでも一緒だったのだ。その時は、単に彼を見かけただけで、話をすることはなかった。見た目からして絶対に日本人だと思い込んでいたが、そのまま声をかけずに終わった。その後もスペインに帰って来てから、途中の鉄道の駅で彼を見かけることがあり、きっと同じ様な道をたどってここまで来たのだと思われる。
さすがにマドリッドのマヨール広場で出会ったときは、お互いあまりの縁の深さに会った瞬間笑い出してしまい(彼も私たちに気づいていたのね)、ここで観念して話をすることにしたのだ。
笑いながら私が日本語で話し掛けると、彼は申し訳なさそうに英語で「ごめんなさい、僕日本人じゃないんです」と言ってきた。ここで初めて韓国人であることを知った私。でも韓国人だろうと、アジアから遠く離れたスペインのマドリッドで出会うと、なんだかとても身近な存在に感じるのだ。彼も同じ様に思ったらしい。それからおしゃべりに花が咲いた。
彼はなんと医大生で、夏休みを使って一人旅をしているという。私たちが看護学生だというと、これもまた話を盛り上げた。お互いの学校のことや旅行のこと、かなり長い間おしゃべりをした。
やっぱりヨーロッパへ行き、自分が異邦人であることを感じる時は、同じアジアの人たちを見を持って同胞と感じるものなのだろうか。ギリシャで韓国人の男性と知り合いになった時も、同じ様な親近感を持ち、仲良くなったものである。話していても感覚が似ているところが多く、楽しいのだ。
こうして私たちは友達となり、写真も一緒に撮って、日本に帰ったら送る約束をした。彼とはメルアドの交換もして、日本に帰ってきた後かなり長い間メールの交換もしていた。彼はその次の年も、イスラエルとかあの辺を一人旅しており、精力的に活動していた。
途中で私がメルアドを変えてしまい、その時のごたごたで彼にメールを送らなくなってしまい、今は連絡が途絶えているが、もう医者になっている頃である。とても優しい男の子だったので、きっと良いドクターになっていることだろう。お互い医者と看護師という立場でまた会って話がしたいものである。
とにかく、このように今日1日だけでも、私はたくさんの国の人に出会った。色々話もできた。これだけで、私の人生にとってなんて刺激的で楽しいことだったろう。異国の地にいるだけでも、十分刺激的で、得るものも多い。全身を通して色々なものを吸収しているといった感じだ。それに加え、色々な国の人と話ができる。私にとっては本当に贅沢な時間であった。
旅行に行った時に感じる刺激で、ふと思ったことがある。生まれて数ヶ月の赤ちゃんを外に連れ出すようになると、赤ちゃんはものすごい刺激を受け、脳細胞とか感性が発達するというのを聞いたことがあるような気がする。さすが脳細胞がものすごい勢いで発達している時期なだけある。
実際、私の甥っ子や姪っ子を見ていても、外に出るようになって最初の頃は、ただ外の空気に触れさせるだけで刺激になるらしく、泣いていたのが泣き止んだりして、たしかに刺激を受けているのがよくわかった。
たしか妹によると、外に連れ出した日は夢もよく見るようで、きっと昼間受けた刺激によって脳細胞が活発に活動しているらしいというのを聞いた気がする。
外出に限らず、赤ちゃんや子どもの頃って、色々なことに刺激を受け、興味を持ち、そしてものすごい勢いで成長していくものなんだろう。思い返せば私だって小学生の頃、今よりももっと日常の些細なことに新鮮な興味や楽しさを持って接していた。ちょっとしたイベントや旅行にものすごく興奮し、今よりも数倍楽しんでいたことをよく覚えている。
それが段々歳をとるに連れ、慣れていくせいもあり、小さい頃にはあんなに興奮し楽しみにしていたことにも慣れていく自分がいた。子どもの頃のように無我夢中になって遊んだりすることがなく、下手をすれば淡々と毎日があっという間に過ぎていく、といった歳になってしまった。
そんな私が今一番興奮し楽しみにしているのは、たまに行く海外旅行である。今は海外旅行くらいの刺激がないと、昔のように興奮することができなくなってしまったのかもしれない。
海外の非日常の世界に触れた時の、あの全身で感じる刺激は、もしかしたら赤ちゃんが初めてのものに接する時に受ける刺激と似ているのではないかと、ふと思った。赤ちゃんは脳細胞の成長期であるので、見るもの触れるもの全てに刺激を受けるのかもしれないが、大人になると、このくらい刺激的でないとダメなのかもしれない、な〜んてことを考えたのであった。
こんな感覚は私だけかもしれないが、とにかく私にとって旅行で受ける刺激というのは、脳の活性化において、脳だけでなく精神の活性化においてとにかく重要なことであるのはたしかだ。これだから旅行はやめられない^^

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