お腹も満足して、再度ソフィア美術館を目指して歩き出した。美術館へ着いたのは15時30分頃。ここでは17時30頃待ち合わせすることにして、またそれぞれ別行動。ここでもゆっくり一人でまわることにした。
この美術館は、プラド美術館と違って、20世紀の現代美術を集めた美術館であった。私は絵画とか見るのは好きなのだが、現代美術に関してはほとんど興味がない。私のようなあまり芸術肌ではない者からすると、現代美術はよくわからないのだ^^;だから、日本でもほとんど現代美術展とかは行ったことがない。
このソフィア王妃芸術センターには、ピカソ、ダリ、ミロ、ファン・グリスなどの現代の有名なアーティストの作品が展示されているようだが、私がここに来た目的は、さっきも言ったようにただ一つピカソの“ゲルニカ”を見るためだけだった。
美術館に入り、ゲルニカが展示されている2階へまっすぐと向かった。そこには美術の教科書で見たことのある、あの有名な巨大なゲルニカの絵が壁にかかっていた。このゲルニカの絵は、1937年のスペイン市民戦争の際、バスク地方のゲルニカの町がドイツ軍によって爆撃され、多数の負傷者を出したことに対する、ピカソの戦争に対する怒りをあらわした絵なのである。
とても有名な絵なので、日本でもこの絵を目にする機会はあちこちであると思う。きっと多くの日本人がこの絵を知らず知らずのうちに目にしたことがあるのではないかと思う。
そういう有名な名画であるためか、それともピカソの戦争に対する怒りや命の大切さがこの絵からあふれているためか、この巨大な絵は想像以上の迫力があった。やはり名画というのは、素人の目から見ても、何かしら迫力と言うかオーラみたいな目に見えないものがあふれている、そんな感想をこの絵を見て思ったのである。
しばらくの間、この絵の前にたたずみ、ピカソの思いと言うか絵からあふれてくる感覚を味わった。この絵を見るだけでも、この美術館を訪れた価値は十分あった。ゲルニカの絵を見たあとは、その他のものをぶらぶら見たが、現代美術に興味がない私でもそれなりに楽しめた。
やはり日本でもそうだが、美術館には一種独特な雰囲気があって、私からするとその独特な雰囲気は、非日常をあらわすものでもあって、それだけでも十分楽しめるものなのだ。だから普段の生活の中においても、時々ふと美術館に行きたくなるものなのである。私にとって美術館とは、教養を高めるだけではなく、非日常の空間を味わうところでもあるのだ。
こうしてソフィア王妃芸術センターを堪能し、そこの中庭で少し休んだ後、Mちゃんと一緒に地下鉄に乗ってホテルの近くであるプエルタ・デル・ソルまで戻った。プエルタ・デル・ソルは中心地の繁華街なので、プラド美術館近くのちょっと高級で落ち着いた雰囲気とはガラっと変わり、俗世間に戻ってきたと言う感じがした。
Mちゃんとはまたここで別行動し、私はプエルタ・デル・ソルあたりのお店の何軒かを見てまわり、買い物することにした。買い物がてら近くのカフェでお茶をしたりして、最後のマドリードでの生活も楽しんだりした。
荷物を置きにホテルに戻り、ここでMちゃんと合流。一緒に近くのバルに夕食を食べに行った。ここで今回の旅で初めてスパニッシュ・オムレツを食べた。まあ、別に日本で食べられるスパニッシュ・オムレツと同じ様に、普通においしかった。ただこの時飲んだ赤ワインは、スペイン最後だからかと思うと、妙においしく感じたのを覚えている。
帰りにまた近くのデパートに寄り、ついでだからとこの時大好きだったリッキー・マーティンのCDを買ったり、スーパーマーケットで安いお菓子を多量に買ったりしてホテルに帰った。
スーパーマーケットで買い物をしている時、フランス人の若い女の人に声をかけられた。彼女もどうやら旅行者だったらしいが、どうやら“ソイ・ミルク”が大好きでここでも買いたいのだが、このスーパーでは見つからないのだと言う。日本人の私ならどこで売っているか知っているだろうから、教えてくれ、というようなことを英語で言われた。
私は恥ずかしながら、この時“ソイ・ミルク”というものが何なのか、ちっともわからなかったのである。あとで考えてみれば、簡単なことだったのに、その時はどうしてもわからなかった。
一緒にスーパーマーケットの中をそれらしきものを求めて探したのだが、何のことだかわからない私が探しても見つかるはずもなく、結局彼女に「やっぱりわからない。役に立てなくてごめんなさい」と謝ったのであった。
彼女はとても気さくで明るい人で、「気にしないで〜!日本人だから知っていると思って話し掛けちゃったけど、日本人ならみんな知っているわけないもんね!私だってフランス人だけどチーズ嫌いだし〜」みたいなことを明るく言って、私を慰めてくれるのであった。
後日、そういえばあれは豆乳のことだったかと思いつき、なんで気づかなかったのだろうと残念に思ったが、今となってみれば思いで深い出来事の一つである。外国でも今や豆乳は人気の商品なのだろうか。豆乳を見ると思い出す出来事である。
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