ラーゴスという町は、ポルトガル南部のアルガルヴェ地方にあり、かつてこの地方の首都だったらしく、歴史の古い町らしい。現在この町の人口は1万人ちょっとの小さな町だが、大西洋に面している港町で、古くから大西洋、地中海交易の恩恵にあずかって繁栄してきた町らしいのだ。現在でも小さな港町ながら国際的なリゾート地として、南部の中心地として栄えているらしい。
私がラーゴスに行きたかったのは、リゾートのためではなく、サグレスという町に行きたかったからだ。サグレスは、ラーゴスから約30�劼曚廟召帽圓辰燭箸海蹐砲△訥�で、ユーラシア大陸の西の果ての突端にあるようなところである。
実はギリシャ旅行記でも書いたのだが、私は沢木耕太郎さんの『深夜特急』の熱烈なファンで、以前この本を読んでポルトガル編のサグレスの話に深い感銘を受け、いつか私も沢木耕太郎さんのようにユーラシア大陸の果てにある、このサグレスの岬に行ってみようと夢見ていたのだ。
なぜこれほどサグレスに行ってみたかったのか。それはサグレスが沢木さんにとって特別の土地のように感じたから、私も自分の目とあらゆる感覚を使ってサグレスという土地を感じてきたかったからなのである。
沢木さんの『深夜特急』は、ご存知の方も多いとは思うが、沢木さんが25歳の頃、日本を出発して香港からアジアの国々を回り、そしてインドからバスでロンドンまで旅するという青春旅行記みたいな話なのだ。
これはただの旅行の情報が載っている旅行記とは違う。沢木さんが見て回った外国の町角のにおいが伝わってくるようだし、この本を通して若さや人生なども考えたように思う。だからこそ、何十年たった今でもこの本は古くさくならず、今でも新鮮な感動を私たちに与えてくれるのかもしれない。私にとって永遠の名作である。
沢木さんは日本を出発して1年近くかけヨーロッパまで来るが、だんだんと旅の終わりというか旅を切り上げるきっかけをつかめなくなっていた。そんな時ポルトガルに行き、そしてサグレスまで来た時、やっと旅を終わりにできると思ったのだ。そしてサグレスに初めて来たにも関わらず沢木さんは、自分は以前ここに来たことがあるという不思議な感覚を体験したのだ。
“まるで、私の体内に古い祖先の記憶が埋め込まれているかのように、記憶が甦ってくる。この崖、この海、この空、この音・・・。間違いなく、いつの日か、私はこの崖に立ち、このように海を眺めていたことがある・・・。”
私はこの部分に深く感動した。なんとなくその感覚を私もわかるような気がしたのだ。こうしてサグレスという地名は、私の心の中に強烈にインプットされたのだった。
その他にも沢木さんがこの本の中で述べている面白い部分はたくさんあった。ポルトガルに関連しているところでは、「茶」の話がある。
アジアとヨーロッパは、お茶のことを何と呼ぶかでも違いがあるというのだ。日本では「チャ」、中国でも「チャ」、インドやトルコでは「チャイ」など、アジアの国々では「チャ」「チャイ」といった「C」で始まる「茶」の国なのだ。
しかし、このように仏教・イスラム教のアジアの国々からキリスト教のヨーロッパへと入ると、「茶」は「ティー」「テ」といった「T」の茶の国に入るのだ。沢木さんが旅してきたギリシャ、イタリア、フランス、スペインも「T」の国だった。
面白いことに、それらのヨーロッパの国々を通り過ぎ、ユーラシアのもう一方の端の国であるポルトガルまで来て見ると、なんと「茶」は再び「シャ・CHA」という「C」で始まる単語になっていたのだ!サグレスのホテルで沢木さんはこのことに気づく。“私は、「C」より出でて、今再び「C」に至ったのだ・・・。”とは沢木さんのお言葉。私はこの部分にも強く引き付けられた。そして文化の違いや面白さ、それにポルトガルと思わぬアジアのつながり、縁みたいなものを感じ、いつかポルトガルに行ってみようと思っていたのだ。
そして今、現実にポルトガルまで来ている自分がいて、サグレスの町を目の前にしている。この先まだまだ時間があるので、絶対にサグレスまで足を伸ばしてからスペインに入ろうと思っていたのであった。サグレスはとても小さな町で、ホテルなどの情報はあまりない。だからサグレスの近くにあるラーゴスに滞在し、サグレスへ行ってみようと考えたのであった。
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