さて、美しい青っぽいタイルの装飾のブー・ジュルード門をくぐっていよいよフェズ・エル・バリに入っていった。このブー・ジュルード門というのがフェズ最大の門らしく、1913年に建造されたものだという。タイル張りの美しい模様が、いかにもイスラムっぽい雰囲気を醸し出していた。
門をくぐり、ガイドのおじさんのあとについて歩き出してみて思った。地図で見ると小さい町のように思ったが、想像以上に大きく、人で賑わい、混沌とした町であるということを。
どうやらメインロードとなるような2本の通りもあるようなのだが、どちらにしろそのメインロードも狭くて細い路地に変わりない。その他にも細い路地が網の目のように走っている町なのであった。それにひしめきあうように建物がぎっしり建っている。たしか旧市街の町中は道が狭いので、車は入れず荷物を背負ったロバが活躍しているが、この狭さと混雑ぶりを見れば納得である。
人も多い狭い旧市街の町中の細い路地をガイドのおじさんの後ろにくっついて歩くのがやっとであった。やはりガイドを雇って正解だったと一人納得。まあ気ままに歩くのも楽しいかもしれないが、複雑さはかなりのものだ。
少し歩いてみて思ったのは、フェズの旧市街はなだらかなすり鉢状のような形になっているのではないかということであった。周りを城壁で囲まれていて、中心に向かってなだらかに下っていく、そんな感じである。入り口のブー・ジュルード門をくぐり、徐々に下って町の中心に向かっていくといった印象を持った。
ガイドのおじさんは、商売もあるのだろうが、私たちを皮製品のお土産屋さんとか色々なお店にも連れていった。フェズは皮製品が名産なのか、皮製品を作っている工場(といっても小さな建物なので家内工場といった感じの作業場)などにも連れて行ってくれ、作っている様子などを見せてくれた。
その他にも絨毯を作っている機職人のところにも行き、昔懐かしいような機織機械みたいなもので作業をしているところにも連れて行ってくれた。
少々お土産関連のところに連れて行かれることが多かったような気もするが、町の説明や歴史、それに自分たちだけだったら見られないお店の裏側なども見せてもらえたので、やっぱりガイドを頼んで良かったと思う。私たちは高価なお土産などは何も買わず、道端で売っているモロッコっぽいブレスレットやオイルを学校の友達に買っただけで、ガイドのおじさんは当てがはずれたかもしれないが。
それに“ヘンナ”(染料)も見られた。ヘンナはミソハギという植物の葉から取れる赤茶色の染料で、多分今日本で徐々に浸透している髪染めの“ヘナ”もこれのことだと思う。こちらでは髪を染めるだけでなく、魔よけにもなると信じられており、手にこまかい刺青のような模様を描いたりするのだ。実際その実物を見せてもらったが、細かい模様が手にいっぱい描かれており気持ち悪いくらい^^;;記念にやってもらうのも面白いかもしれないが、私たちは見るだけにした。
こうしているうちにあっという間に時間が過ぎた。フェズの喧騒に心を奪われているうちに、気がついたら時間も流れていたという感じだ。
外はだいぶ暗くなってきた。ガイドのおじさんは、私たちを旧市街の外に連れて行き、タクシーに乗せ、今度は高台の旧市街を見渡せる丘のようなところに連れて行ってくれた。ここから旧市街のきれいな夜景をみせてくれるつもりらしい。
旧市街は砂漠みたいに乾いた大地にある城壁の町、といった感じでまるで日本の町とは雰囲気の違うところだ(当たり前かもしれないが)。城壁に囲まれた町は、日本のように近代的な建物があるわけでもなく、こちょこちょと古い建物がひしめき合っているような感じの町並だ。
そして夜の旧市街は、日本のように煌々と街灯が明るく照るのとは違い、各建物の壁や窓からオレンジ色薄暗い灯りがもれるようなうっすらとした明るさで、いつも私たちが見慣れている夜景とは明らかに違う。そのうっすらとした不思議な明るさ、それはまるで何百年も前からこんな景色だったのではないかと思わせるような、幻想的な町の夜景だった。
ガイドのおじさんによると、「この景色はエルサレムの町に似ている」とのこと。なるほど、エルサレムはきっとこんな感じの町なのだろうと素直に思う私であった。行ったことはないけど、エルサレムという町のイメージにぴったりくる、そんな風景であった。
夜景を見て、ガイドのおじさんによる私たちの旧市街の観光はお終い。新市街まで戻ってきてガイドのおじさんと別れた。おじさんにここで約束のお金を払った。ここで一気に高いお金をふっかけられたらどうしようかと思ったけど、最初の約束どおり120ディラハムでふっかけられることはなかった(ホッ)。おじさんに20ディラハム(約230円)のチップを払って別れた。
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